中企業病~大企業病とは異なる中堅・中規模企業特有の怖ろしい病気を知っていますか?
「こんなこと私が言ってよかったんですね・・」
とある中規模企業の課長さんが、私のお手伝いするプロジェクト会議の終了後におっしゃった言葉です。その課長さんは、これまで社長の方針に意見するなど思いも及ばなかったということのようでした。
病魔との闘いがはじまる
ああ、この会社はなんだか随分とマズいことになっているなと感じたと同時に、私が「中企業病」というテーマを考えるきっかけにもなりました。
この会社、深刻な病魔に侵されていました。
なんだかシリアスなお話なんですね
大企業だけじゃなくて、中堅・中規模企業にも「病気」があります。それも特有のタチの悪い病気が。
大企業には、「セクショナリズム」や「官僚主義」をもたらして組織をダメにする「大企業病」というものがあることは広く知られていますが、実は、中堅・中規模企業にも「中企業病」と呼ぶべきものがあります。
中堅クラス以下の会社は、大手企業が設立する子会社などを除いて、ほとんどが創業オーナーまたはその親族後継者が経営していることを考えると、「中企業病」は「オーナー企業病」と捉えてもよいのかもしれません。
この病気に罹ると、やることなすこと悪い結果になってしまいます
「中企業病」とはどんな病気なのでしょうか。 大企業病がそうであるように、会社を、組織をダメにしていきます。
「ダメにする」って、尋常やないですね
事業環境の変化を受けて忙しさも増すばかりなのに、業績は伸びるどころかむしろ厳しくなり、それこそ必死に売上高を確保しても儲からない。働けど働けど・・という状況に陥ってしまう会社の多くはこの病気に罹っている可能性があります。
この病気の厄介なところは、どこから手を付けていいのか分からなくなるところです
病状が悪化してくると、忙しさと相互不信が相まって、社内が暗く重苦しい雰囲気になっていたりします。
人材教育もままならず若手も定着せず、量的にも質的にも人手不足は慢性的に解消されることなく、その結果ミスなども増えて、リカバリーのための余計な作業でますます忙しくなります。
もっと忙しくなってくるとさらに・・・何か悪いスパイラルに陥ったようで、抜け出そうにもどこから手を付ければよいか分からなくなってしまいます。
放っておいたら自然に治るとかそんな楽観視できるものではありません・・放置は非常に危険です
儲からなくなったのは、顧客の要求が厳しくなった、ライバルが攻勢を強めているなど事業環境が厳しくなってきているという要因ももちろんあるでしょうが、何をやってもダメなカンジ・・つまり「ドツボな感じ」になっていたら、中企業病を患っている可能性を疑う必要があります。
会社が病魔に蝕まれている現状を直視しないと、今後も変化していく事業環境に対応できないまま、ますます事態は悪化していきます。
困ったことに、この病気は放っておいて自然に治癒していくことは、よほどのラッキーでもない限りないように思います。
そんなー、なんだかとってもコワいんですけど
どの会社も罹る可能性があります。あなたの会社もすでにそうかも・・
結論めいたことを先に言ってしまいますが「中企業病」は会社トップの強いリーダーシップをきっかけにして発症します。 (トップ=社長や“院政”を敷く会長など、以下同じ)
どの会社もトップのリーダーシップがあったからこそ、これまで継続・発展できたわけですから、この病気にはどの会社も(程度の差はあれ)罹り得るということになります。
物事にはどうしても光と影があるものです。 強い光の裏の、濃い影の部分で何が起こっているかを見ていけば、「中企業病」の発症メカニズムが分かってきます。
中企業病の発症と進行のメカニズム(概要)
「中企業病」のきっかけは、トップの強いリーダーシップの影に潜んでいるので、どの会社にも起こり得ます。
どのように発症、進行していくのかを考えます。
「中企業病」の初期症状・・こうして罹患していきます
会社のような組織において「強さ」は「権限」に裏付けられています。
トップが厳しく、時に高圧的に振る舞えるのは権限があるからです。
症状① 主体性が失われ、思考力が育たない
人はよほどのことでもない限り権限者にはおとなしく従います。
少々おかしいと思っても、少々腹が立っても、トップの指示には従います。
そうすることが安全ですし、なにより楽です。
自ら考えて昨日と違うことをする、あるいは他の人を動かすには大きな労力が必要です。
トップの指示を超えたり外れたりして何かをするより、素直に指示に従ってルーティンをこなしているほうがはるかに楽なのです。
そういうことを長い間続けていると、(裏で文句を言いながらでも)すっかりトップに依存してしまい、主体性は失われ、思考力が育まれなくなることは容易に想像できます。
いざ事業環境が一段と厳しくなったといっても、そのような組織には問題を打開する力は備わっていません。
症状② 中間マネジメントが機能しない
事業環境が一段と厳しくなって、業績が目に見えて悪化し始めた時こそ会社が一丸となって難局に立ち向かわなければならないのですが、中企業病を発症した会社には、それを難しくする要因がもう一つ出来上がってしまっています。
これまで日々の業務ではトップの指示に従っていればよいわけですし、熱心なトップは常々現場に出て叱咤激励をしています。
トップが細かなことまで自ら決裁を下すため、部長や課長といった人たちはほとんど権限というものを持たされていません。
機会が与えられてこなかったわけですから、管理職にある中堅クラスの人たちの管理(マネジメント)力は成熟していません。
営業や製造といった職能について、個々には優れた力を持っているのですが、優れた管理者(マネージャー)にはなれていないのです。
部下をコントロールし、チームワークを高めて成果を上げさせたり、指導育成して人材のスペックアップを図ったりすることができないのです。
そもそも、仕事のできる人は誰かに教えたりやらせたりするより自分でやったほうが早いわけですし、たとえ教え好きな人でも、業務が忙しくなってくれば部下に構っている余裕はなくなってきます。
部下の指導や評価・育成などは気を遣うし、面倒くさいし、やり方も分からないし、目先のことでいえば非生産的な作業と感じています。
中間マネジメントが充実してこないと、組織力を発揮して戦えないばかりか、若手の能力向上にも時間がかかり、戦力自体が整いません。
何か手を打ちたいけど、周りはのんびり待ってはくれません
会社が個々人としても組織としてもパフォーマンスが低調なままだからといって、それにテコ入れしようとしても、周りの変化は待ってはくれません。
顧客からの価格の下げ圧力は高まり、付帯サービスの要求は強くなる一方です。
ライバルが攻勢を強めればそれに対抗しなければなりません。もちろんそのためには人件費諸経費とコストもかかります。
ライバルが値下げに踏み切ったりすると、否応なくそのレベルまで追随しなくてはなりません。
人件費や諸経費がかさみコストが上がる、販売価格まで下げなければならない・・利幅はどんどん薄くなってしまい、利益確保のために数量を伸ばす必要に迫られ、儲からないのに忙しくなるばかりです。
いくら昔の成功体験を語ってみても、事業環境が変わったことに対して会社が変わっていなければ、それは相対的に会社が弱ってきていると捉えるべきなのです。
忙しさが増すことでさらに、考える余裕や部下に目をやる余裕がなくなっていきます。
悪循環の始まりです。
とっても気になります・・