慢性的な人材不足にハマって抜け出せない~【中企業病】
もともと中規模までの会社であれば、知名度が高く給料のよい大手企業に比べて人材の確保は難しくなります。
特に、中企業病の会社では慢性的な人材不足に悩まされます。
様々な悪循環が原因で、儲からないのに忙しくなっていますから、人手の不足感が解消することはありません。
中企業病の病魔が「人材面」でもたらす症状について見ていきます。
中企業病は人的リソースも弱体化させます
中企業病の人材面での症状① 離職率が高い
従業員にしてみると、仮に業界標準程度の給料を貰っていても、忙しくなるばかりであれば割に合わない気がしてきます。
今は少々忙しくても、一過性のものであると思えたり、今頑張れば先々いいことが待っていると期待出来たりするのであれば我慢もできますが、どうもそんな風ではありません。社内はなんだか淀んだ重苦しい雰囲気ですし・・・。
ヨソも似たようなものかもしれませんが、隣の芝が青く見えてしまうでしょう。
未練がないのであっさり辞めてしまう
「会社の魅力-イヤなこと+転職の面倒さ」がマイナスになったら人は会社を辞めます。
中企業病の会社では、「ドンヨリと活力が無く、皆が口々に文句を言いながら・・給料も上がらないのにどんどん忙しくなって余裕がなくなってきている」という風に「会社の魅力」が随分小さな値になっています。
何かイヤなこと(上司との衝突など)でもあれば簡単に辞めてしまいます。
従業員が辞めると言い出した際の「引き留め」の場合も、中企業病の会社では様子が違いそうです。
本来、会社にとっては誰かが辞めたところで組織としてその穴埋めは出来なければなりません。
その上で、「せっかくそれなりの仕事のできる人材を失うのは惜しい」ぐらいのテンションで引き留める、引き留められるのが「好ましいカタチ」です。
「ここにはあなたにとってもう少し経験を得られる場がある」「辞めるのはそれを経験してからでも遅くないのでは?」と本人のことを思って(思ったフリをしてでも)慰留するのがキレイなカンジです。
それでも辞めたいという意志が強ければ、本人の意思を尊重して快く送り出してやる・・余裕があれば問題なくそれができます。
でも、中企業病で余裕が失われていると「今辞められたら困る」「残された者が苦労する」・・しまいには「無責任だ!」などと詰るようなことになってしまいがちです。慰留どころか、本人のことはそっちのけで哀願、恫喝といった見苦しいことになってしまったりします。
そんな会社に残りたいでしょうか?要するに「未練に乏しい」会社になってしまっています。
(まあ、これは会社がどうというだけでなく、引き留める側、引き留められる側個人の問題も大きいので一概には言えません。でも、中企業病が重篤な会社と、ブラック企業ではなかなか辞めさせてくれない傾向にあります。)
ということで、離職率が高くなるのも中企業病の会社の症状の一つです。
中企業病の人材面での症状② 補充も困難
人材が抜けてしまったら補充しなければなりませんが、それも難しくなっています。
中企業病の会社には、処遇を業界他社より良くするような余裕はありませんし、よい評判が立つこともないでしょう。(ネットの転職情報などでは、あることないこと含めてかなり辛辣に書かれそうです)
なんとか量的に揃えても、質的に劣化する
数的にも確保しにくいですが、質的にも、辞めた人より優秀な人を確保できるとは限りません。
しかも、先ほどの 「会社の魅力-イヤなこと+転職の面倒さ」 で考えると、「転職の面倒さ」が低そうな若くて優秀な人から辞めていくことになります。
優秀であれば、中企業病に冒された会社に疑問を持ち、魅力を感じなくなるのも早そうです。
仮に辞めた人と同程度のスペックの人を確保できたとしても、慣れとか経験といった観点で、当座はパフォーマンスが落ちるでしょう。
せっかく仕事も覚えても「そこそこ使えそうになった頃に、会社に失望して辞めてしまう」・・そんなことを繰り返していては、いつまで経っても人材面での上積みどころか補充さえままなりません。
トータルの人材スペックとしては徐々に劣化していくことになります。
中企業病の人材面での症状③ 人材を育てられないから育たない
人材の「質」が問題になるのであれば、人材を開発・育成するなりしなければならないのですが、残念ながら中企業病の会社はそれらが大変苦手です。
なぜなら、中堅クラスの人たちにその能力が乏しいからです。
人材育成の経験に乏しい
人材育成をしなさいと言っても、やり方が分かりません。
仕事を自分でやるのはできても、人にやらせるには別の能力が要ります。(経験のある人なら分かると思うのですが、「育成」はけっこう大変なことです。)
本来であれば中堅クラスの人に求めたい、若手の人材育成とそのためのマネジメントができないのです。
無理もありません。「たまたまいい上司、いい先輩に当たったことのある」人以外は自身もまともに育成された経験がないのですから、できなくて当たり前です。
結果として、個人の能力が十分に伸ばされないまま、“虚弱”で生産性の低い会社になってしまっているのです。
そもそも、そんなヒマもないし
それ以前に、中堅クラスの従業員はどんどん忙しくなっていますから、そんな若手の面倒を見ているようなヒマがありません。
下手なことされて尻ぬぐいするぐらいなら、最初から自分でやったほうが手っ取り早いです。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて・・」とか悠長なことをやっていられません。そのための時間的猶予も与えられないわけですし。
なんとかならんのですか。
誰?この人
知らないんですか?
人材面だけでも「悪循環」が発生します
こういった人材面での症状は、他の中企業病の症状と同じく「悪循環」に陥ってより病状を悪化させます。
- 会社を辞める人が出ると、すぐに補充できないため他にシワ寄せが行きます。
- 当然その分忙しくなりますが、なんとか確保できた人材に「現場での育成」をしようと努力して足手まといになります。
- 中企業病の会社が優秀な人を確保するのも大変ですから、育成についても手間がかかります。
- 仮に優秀な人材が確保できるとある程度自立的に成長していきますが、そういった優秀な人は中企業病を重く患っているような会社には残念ながら早めに見切りを付けます。
ここから悪循環が加速します。
- よい人材が定着せずに頭数だけ揃っても「質」の面が低下して生産性は落ちていきます。
- 業績を維持しようとするとさらに忙しさが増します。比例して給料が上がるわけでもありません。
- 忙しいわ給料上がらないわで辞める人が増える一方で、新たな人材確保も困難になります。
- 会社を支える中堅クラスの人材の負担がさらに大きくなります。
- そうなるといよいよ、人材育成や部下のマネジメントに手が回らなくなります。
- 若手のケアが出来ずに、離職を食い止めることがさらに難しくなります。
- 限界を感じた中堅クラスまで辞めることになってしまえば・・
と、悪循環はさらに深みにハマり込んでいくことになります。
人的なパワーに乏しい虚弱な会社になっていく
こういった状況は、一朝一夕に改善できるものではありません。
過去に何かを間違えた、過去にやるべきことをやってこなかったツケが回ってきています。
人材面で質の劣化した“虚弱”な体質は慢性的になり、会社に根付いていきます。
体質が虚弱だと病気に対する抵抗力も当然に落ちてきます。
もう「中企業病」に抗うすべはないのでしょうか・・。
そんな~