商品による顧客便益や提供価値を見つめ直す~【戦略魔法陣:戦略要素「WHAT」の1次進化】

「WHAT(何を)」ビジネスするか・・

今回はその一番の基本となる戦略要素「WHAT」について考えてみます。

戦略要素は他の要素との文脈で解いていくことで「進化」していきます。

「WHAT」はどう進化するでしょうか。

目次

「WHAT(商品)」についてじっくり考えてみる

「商品」に関する戦略要素「WHAT」について、他の5つの戦略要素との文脈で考えてみましょう。

WHAT-WHO:「客や市場」の文脈で自社の「商品」を考える

お客さんや市場の文脈で「WHAT(商品)」について考えます。

「客」の文脈で・・と言われて、まずピンとくるのが「客のニーズ」ではないでしょうか。

でも、「ニーズに応える」だけではよく分からないので、「ニーズに応えるために何を提供するか」まで踏み込んでみます。

客が商品に求めることに応える

例えばこんなふうに考えてみましょう。

  • 何がしたくてその商品を買うのか
  • 買うとどんないいことがあるのか

「お客さんがその商品から得られるメリット」とかの話、つまり、マーケティングなどの分野で「便益」と呼ばれるもののことですね。

「WHAT-WHO」では「便益」がテーマになります。

「WHAT-WHO」はこう考える!

「WHAT-WHO(客・市場の文脈で商品を考える)」とはこういうことです。これがちゃんと説明できればOKです。

【WHAT-WHO】

わが社の商品は、

お客の求めに対応して(こんな)便益を提供する商品

である。

「WHAT-WHO」の主な論点「便益」についていくつか

求められているのは「モノ」そのものじゃない

「便益」を語る際によく引き合いに出されるこんな格言(?)があるんですがご存知ですか?

ドリルを買う客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しいのである

Theodore Levitt

お客が求めているのは、「モノ」や「サービス」的な商品そのものというより、その商品を利用・消費することで得られる「何か」のほうである・・ということですね。

つまり、客が商品を買うのはそれを使ってやりたいこと(目的や意図)があるから買うのであって、モノ的な商品は「手段」にすぎないということになります。

お客が商品に求める「便益」にもいくつかタイプがあって・・

お客がその商品を買うワケにもいくつかタイプがあります。大きく分けると2つです。

例えば靴を買うのに「履きやすくて丈夫だから」というのと「カッコイイから」とではちょっと違いますよね。

機能的便益と情緒的便益

「履きやすくて丈夫」は「機能的便益」、「カッコイイから」は「情緒的便益」と言われるものです。

詳しい説明は他に譲りますが、簡単に言うと「モノ本来の機能がもたらす便益」と「モノ(を利用・消費することで得られる)の気分的な便益」があるということです。

他にも「自己表現的便益」というのもありますが、今は詳細なマーケティング論でもないのでざっくり2つでいきます。

何を気に入ってもらっているか?とかよく考えるのが大事

「それが何便益なのか」というのは実は問題ではなく、「ウチの商品のどこを気に入ってもらっているのか」・・靴の話だと「履きやすさ」「丈夫さ」なのか「かっこよさ」なのか・・ということをよく考えるのが大事です。

ここを間違えると、他のいろんなことも間違えてしまうのでしっかり考えてみてください。

WHAT-HOW:「売り方」の文脈で自社の「商品」を考える

「売り方」の文脈で「WHAT(商品)」を考えてみます。

「ものがよければ売れる」なんてのは昔の話で、いくら「いいもの」であっても「売り方」がマズい商品だと売れません、利益になりません・・っていうのはイメージできると思います。

「売り方」というと、まずは「営業やマーケティング」が思いつきますね。

「売り方(営業やマーケティング)」から見てウチの商品はどうなのか?

「売り方(営業やマーケティング)から見る」・・ちょっと分かりにくいですかね?

営業経験のある人なら分かると思いますが、「売りやすい商品」というのがあります。

そもそもの品質や性能が良いことはもちろんですが、それ以外にも

  • 他との違いが分かりやすい
  • コンセプトが分かりやすい

そんな商品は営業してても「売りやすい」ものです。

「違い」とかを「分かりやすく」説明するのは営業さんの役割なのでは・・?

確かにそうですが、商品自体も「分かりやすく」つくられていると、なおよいと思いませんか?

「WHAT-HOW」はこう考える!

「WHAT-HOW(売り方の文脈で商品を考える)」とはこういうことです。これがちゃんと説明できればOKです。

【WHAT-HOW】

わが社の商品は、

営業やマーケティングがしやすい(こんな)工夫がされた商品

である。

「WHAT-HOW」の主な論点「売りやすさ」についていくつか

「惜しい」「残念」なカンジになっていないですか?

「ものはイイのに・・」と、せっかく商品は優れているのに「売り方」がマズくて鳴かず飛ばずのままで、「惜しい」「残念な」ことにはなっていないでしょうか?

  • ネーミングがパッとしなくてインパクトがない
  • イメージする買い手(ターゲット)に合っていない
  • 差別化が出来ていなくて、競合品に埋もれてしまう

いくらものがよくても、売れなくてはすべてが無駄になるので「売れるための工夫」は軽んじてはダメです。

これらは「戦略」という意味では比較的「小手先」のことのようですが、「HOW」はそもそも「売り方」ということで「戦術」的な意味を持つ戦略要素でもあります。「戦術」もあっての「戦略」です。

WHAT-資源:「資源」の文脈で自社の「商品」を考える

「資源」の文脈で「WHAT(商品)」を考えます。

ウチのリソースの特長が活かされているのはどんな点?

わが社の商品の特長は自社のこんなリソース(経営資源)が活かされているから・・と言えるポイントを考えてみます。

その資源がユニークなものであれば、きっと他ではつくり出せない商品になっているのではないでしょうか。

「WHAT-資源」はこう考える!

「WHAT-資源(自社資源の文脈で商品を考える)」とはこういうことです。これがちゃんと説明できればOKです。

【WHAT-資源】

わが社の商品は、

自社の(こんな)経営資源を活かしてつくっている商品

である。

「WHAT-資源」の主な論点「資源を活かした商品」についていくつか

商品に「わが社特有の~」が効いてるのはどんなところ?

自社が使える(特有の)経営資源を活かした商品・・とは例えばこんなイメージです。

  • 独自のノウハウでつくられた高品質な商品
  • 大規模設備で効率的に生産できる商品
  • 原料から製造まで一貫した体制で可能となるカスタマイズ自在な商品
  • 秘伝の製法でつくられた唯一無二の商品
  • マニュアルの徹底で安定的に提供できるサービス
  • 独占ライセンスに基づく当社だけが提供できる商品
  • 調達困難な特殊原料を使ったユニークな商品

活かす資源(リソース)は幅広く

人材、設備はもちろんのこと、「技術」「ノウハウ」「ネットワーク」「組織体制」など幅広く「使えるもの・こと」を考えてみましょう。

「効率性」と「独自性」どっちに効く?

大きく分けると資源活用の有効性はこの2つになります。

「効率的につくれる」つまり「安くつくれる」というのと、「独自性の高いものがつくれる」という2つの方向ですね。

「どちらかだけ」ではないですが、どっちに重点があるかで「商品」の取るべき方向も決まってきます。

WHAT-環境:「環境」の文脈で「商品」を考える

「事業環境の影響」の文脈で「WHAT(商品)」を考えます。

環境の変化に上手く適応しているのはどんな点?

最近の事業環境の変化の影響に対してわが社の商品がどうなのか(上手く対応できているのか否か)を見ていきます。

「WHAT-環境」はこう考える!

「WHAT-環境(事業環境の文脈で商品を考える)」とはこういうことです。これがちゃんと説明できればOKです。

【WHAT-環境】の考え方

わが社の商品は、

環境変化の影響に(こんな)ふうに対応している商品

である。

「WHAT-環境」の主な論点「環境変化に適応できている商品」についていくつか

その環境変化が「どう影響するか」を考えないと意味ない

よく「環境変化を捉えて」とか言われますが、事業環境は刻一刻と変わっていますので「変化」だけ捉えても仕方ないです。

「ウチの事業や会社にとってどんな影響があるか」という見方が大事になります。

逆に「影響を捉えられない」環境変化は、相手にしなくてもいいです・・というかできません。「なんか重大そう」でも、影響が分からないと手の打ちようがありません。

ただし、分かったらすぐ対処です。

その変化は、いいのか悪いのか・・「いいほう」に捉えられたら勝ち

さらに、「ピンチはチャンス」とも言います(逆もあります)。

一見、困った変化に見えてもそれが自社にとって何か新たなチャンスをもたらすものと捉えることが出来たら強いですよね。

WHAT-競合:「競合」の文脈で「商品」を考える

「競合」の文脈で「WHAT(商品)」を考えます。

「違い」が打ち出せている?

「どんな商品?」というとき「他との違い」ということが分かる方がいいですよね。

ライバル商品と大して違いがわからない・・となると買ってもらうために値段を下げたりしなくてはいけなくなります。

商品が「差別性」を備えているかどうかも重要なことです。

「WHAT-競合」はこう考える!

「WHAT-競合(ライバルの文脈で商品を考える)」とはこういうことです。これがちゃんと説明できればOKです。

【WHAT-競合】の考え方

わが社の商品は、

ライバルのものとは【こんな】ところが違う商品

である。

「WHAT-競合」の主な論点「ライバルとの違いがある商品」についていくつか

違うのはどんな点?

同種の商品でも全く同じということはなく、何か違う点があるはずです。

原材料に違いがある、品質に差がある、形状が違う、価格が違う、納期が違う、使う局面が違う・・などなど。

優れている「違い」は独りよがりじゃない?

違いのうちで「優れている」ほうは「差別性」として捉えることができます。

もちろん、自分たちで「優れている」と思っているだけではダメで、客観的でないといけません。

劣っている「違い」はなんとかしないと・・

「劣っている」ほうはライバルに差別化されている点ということになります。

どうやって対応していくか考えないといけません。

その「違い」は本当に有効なもの?

優れている点、劣っている点、いずれの場合も「それが有効に効いているか」という見方が必要です。

例えば、「わが社の商品のほうが優れた点が多い」といっても、ライバル商品の「安い」という一点に負けてしまっているようだと、それらの「優れた点」は「大して有効ではない」という評価にならざるを得ません。

それは痛いわ・・

「WHAT」について5つの文脈で考えたことを整理してみましょう

戦略要素「WHAT」について、5つの他の戦略要素の文脈で考えたことを整理してみます。

5つの文脈はこんなカンジでした。

  • WHAT-WHO:お客の求めに対応して(こんな)便益を提供する商品
  • WHAT-HOW:営業やマーケティングがしやすい(こんな)工夫がされた商品
  • WHAT-資源:自社の(こんな)経営資源を活かしてつくっている商品
  • WHAT-環境:環境変化の影響に(こんな)ふうに対応している商品
  • WHAT-競合:ライバルのものとは(こんな)ところが違う商品

どうでしょう。全て言えましたか?

ポイントになりそうなことを整理してみます

5つの文脈から「WHAT」のポイントになりそうなことを整理してみます。

  • 客の求めることや環境変化に的確に対応した「便益」を実現している
  • 自社の資源やノウハウが活かされ「独自性」が高く「効率的(安価に)」つくることができる
  • ライバルのものとの「違い」がハッキリしていて、しかも
  • 「売れてナンボ」でちゃんと利益も上がる

・・・などを考え併せて整理すると、「便益性」「独自性(差別性)」「対価性」というキーワードが挙がってきます。

これらが相応のレベルに達しているなら、他に負けない独自性、しっかり利益の上がる対価性を備えた、高い便益性を持つ商品だと言えますね!

「WHAT」の1次進化

では、戦略要素「WHAT」が1次進化するとどうなるでしょう。

いよいよですね!楽しみ♪

戦略要素「WHAT」が「競争力」持つことにより戦略要素「価値」に1次進化します

なんかフツーですね

まだ1次進化ですから

でもまだ「価値が高くなった」わけじゃない・・

「WHAT」を5つの文脈で考えましたが、それだけで進化出来るわけではもちろんありません。

「話だけ」「考えるだけ」で実際に「価値が高まった」りはしませんよね。

ここから曖昧だったことをハッキリさせていく、足らずを埋めていく、実際にそのようにする・・という実行が伴ってはじめて「進化した」と言えます。

でももし、「こんなふうに考えたことはなかった」のであれば、こういった検討は大事な一歩になると思います。

「包括的に戦略を立てて・・」とか面倒なことしなくても、「やるべきこと」として順次やっていくだけで随分良くなるかもしれません。

次は戦略要素「WHO」についてです。