強いだけじゃない「勝てる」リソースが競争を優位にする【戦略魔法陣:戦略要素「強み(資源)」の2次進化】

「戦略魔法陣ヘクストラグラム」の2次進化のお話しです。

今回は戦略要素「強み(資源)」を、さらに2次進化させていくための検討事項を見ていきます。

狙いは

勝てるリソースの確立

です。

目次

戦略要素「資源」の「1次進化」おさらい

戦略要素「資源」についての1次進化、詳しくはこちらをご覧ください。

戦略要素「資源」は「強み」に1次進化

「経営リソース」に関連する戦略要素「資源」は、諸要素を考えた上で競争していくために必要な「強み」に1次進化します。

ヒト、モノ、カネに限らず、技術やノウハウ、ネットワークなど無形のものや自社が活用できるもの(社外にあっても)など広く「競争していくために武器になり得るもの」を捉えます。

わが社なりの「強み」があってはじめて、競争の土俵に上がって戦うことができますね!

戦略要素「強み(資源)」の2次進化

「戦略魔法陣ヘクストラグラムの『2次進化』」の話に入ります。

2次進化の目的は「優位性」の獲得

1次進化は単に「戦える」「競争できる」というだけでしたが、2次進化では「競争に勝つ」「ライバルに対して優位に立つ」ことを意図した議論を進めます

もちろん「議論する」だけでなく「(議論検討した結果)必要とされる事項を備える」ことが出来てはじめて「2次進化レベルに達した」と言えるので、「出来ていなかったこと」「不足すること」に対処していくプランとその実行が必要になります。

戦略要素「資源」が「競争に勝てる」ように進化するためには

経営リソースに関する戦略要素「資源」は1次進化で「強み」として把握されました。さらに2次進化では「勝てる」ところまでもっていきます。

どういった検討をすべきかを見ていきましょう!

他の戦略要素との文脈で検討するのは1次進化のときと同じ

ヘクストラグラムでは戦略要素の「進化」のために「各要素を他の要素の文脈で考える」という作業を行います。2次進化でも同じです。

ただ、それぞれ1次進化済みの戦略要素で考えるので、より明快に具体的になっているはずです。

「資源⇒強み」の次の進化の方向性

単なる「強み」を超えて、一連のノウハウの集合体として発揮されていること、組織的・体系的に機能しているようなことを見ていきます。

こんなのは一朝一夕にできるものでもないので、「今から構築する」というのではなく「すでに効いていることをより発展的に活用する」という考え方になります。

「コアコンピタンス」という言葉が想起されます。

ただ、コアコンピタンスと似てるけど違うもののように解説される「ケイパビリティ」も含めてよいと思っています。

コアコンピタンスの例は「ホンダのエンジン技術」とか「シャープの液晶(薄型化)技術」とかが挙げられます。「ナイキのブランド」などを挙げる解説もあります。

ケイパビリティのほうはあまり馴染みがないかもしれませんが、「ホンダのディーラーマネジメント」などがよく挙げられます。

解説を見てもよく分からないので、ものすごく簡単に言ってしまうと、

コアコンピタンスは「事業の中心となるレベルの高い技術やノウハウ」

ケイパビリティは「事業を優位に進める上手いやり方」

といったカンジです。

「強み(資源)」-「価値(WHAT)」:価値提供の独自性や強さを生み出すリソース

わが社の価値提供を可能にしているリソース

わが社の価値提供を可能にしているリソースは何であるかを考えます。

他社でも簡単にできることではなく「これぞわが社の!」と言える価値提供のベースとなるリソースです。

わが社の提供価値を独自なものとしているリソースについて

技術・生産ノウハウ

ホンダやシャープの例が「コアコンピタンス」としてよく挙げられますが、それらは「培われた技術」を基礎としてハイクオリティな製品として具現化する「生産ノウハウ」として確立されています。

なかなかそこまでのものはないかもしれませんが、例えば「範囲を限定する」ことで「そこならウチが一番!負けない!」というものが何かあるのではないでしょうか。

その他価値形成に関するリソース

製品に関する技術やノウハウ以外にも、「付加価値」としてのサービスに特有の強みを発揮できているかもしれません。

「付加価値」とは言いますが、付加であって、顧客がそれを評価する(買ってくれる、高い値段を払ってくれる)のであれば「価値」の一環です。

そういった「付加価値」を可能にするリソースがあるのなら、それを軸として事業展開を考えてみるのもアリだと思います。これまでは「脇役」だったものを「主役」に持ってくるわけです。いきなりは難しくても段階を踏んでいけばできるかもしれません。

「強み(資源)」-「ターゲット(WHO)」:顧客との関係性強化に効くリソース

ターゲット顧客とのコンタクトやコミュニケーションに効くリソース

戦略要素「ターゲット(WHO)」でも、顧客との関係性強化がテーマとなります。

顧客・市場面のリソースを検討する場合も「顧客との関係性強化・深化のためのリソース」という観点で考えてみます。

「ターゲット顧客との関係性を強化・深化するためのリソース」というと?

まずはアプローチするため・・プロモーションを上手くやれるリソース

実際に買ってくれるかどうか分からない相手を「その気にさせる」という局面も重要です。

ここが上手いと狙ったターゲットに関心を持ってもらえます。

プロモーションに効くリソースはあるでしょうか。例えば、幅広いプロモーションチャネルとか過去のプロモーションで出来上がったよいイメージとか、優秀なプロモーションを実現するチーム・人材とか。

顧客との対話のためのリソース

顧客とのコミュニケーションルートを持っていることが大きなアドバンテージになります。

例えば、アフターサービスは顧客とのコミュニケーションの機会として有効です。そこをしっかりやれるリソースがあるなら活かせます。

イマドキな方法としてはSNS等で直接のコミュニケーションルートを持つこともできますね。まあ、これは簡単に真似されやすいですので、そのあたりの工夫があればアドバンテージにはなります。

「強み(資源)」-「戦法(HOW)」:営業・マーケティング、流通面で効くリソース

営業面・マーケティング、流通面で‟勝ちパターン”をつくり出しているリソース

「強み-ターゲット」のほうで「顧客との関係性」は検討したので、ここでは「営業面」「流通面」で考えてみます。

「売ることに効果のあるリソース」に関する論点

独自の営業展開が可能なネットワークや連携・提携関係

ホンダの例の「リテールについてディーラーネットワークを上手くマネジメントできたから北米市場で成功した」のように、必ずしも自社内だけのリソースではなく、外部のリソース(サプライチェーンなど)も上手く活用できるというのも顧客・市場面でのアドバンテージになります。

要するに、「販売網で上手くやれている」ことも「リソースの優位性」です。それだったら、何らかどの会社でも思い当たるところがあるのではないでしょうか。

「強み(資源)」-「事業への影響(環境)」:事業環境変化の影響に上手く適応しているか

事業環境変化の影響に適応するリソース

環境変化に適応するというのは「しのぐ」というのではなく、「上手くやりくりする」というほうがいいと思いませんか。

「事業環境変化の影響に対して上手くやりくりするリソース」についての論点

やはり組織の柔軟性は欠かせない・・けど

環境変化に対して常に上手く適応していくには、やはり「組織としての柔軟性」が必須です。

「レジリエンス」なんていう言い方をされたりしますが、古臭く硬直化した組織に事業環境への対応が上手くできるはずないです。

でも、できない会社には無理

もうこれは、「無理だったら無理」と言わざるを得ません。

誰が悪いかって?(歴代の)社長ですよね。そういう組織にしちゃったんですから。

身体が硬い人って、柔軟体操やストレッチをして多少マシになることはあっても、相当努力しないとなかなか普通以上に柔らかくなれたりしませんよね。それと同じです。

なので、「組織が硬い」ならば「とりあえず『並程度』に柔らかくなる」ことを目指して、ここでのアドバンテージは望まないほうがいいかもしれません。

とは言え、時間をかけてでもやる必要がある

でももし組織としての環境対応力を身に付けたら、この先の困った局面にも上手く対応できる確率が高まります。

これまでは何とか凌げたかもしれませんが、ここから先の事業環境の変化には対応しきれずに会社がダメになってしまうかもしれません。

そうなったとしたら、ダメになった時の人たちが悪いのではなく、それまでに手を打たなかった今の人たちが悪いと考えるべきです。

「強み(資源)」-「対抗軸(競合)」:ライバルにも強みはあるが、それに対抗し得るものか

それぞれ強みはあるが、ウチの強みはライバルに対抗して優位に立ち得るものか

ライバルにも強みがあります。

わが社の強みはそれに対抗して、事業を有利に進めるに足るものでしょうか。

その強みはライバルの強みを凌駕するか

同業同士で「凌駕する」ことは設備等のレベルではなかなか困難かもしれません。

事業に関する技術やノウハウについても一朝一夕に大きく差をつけるのは難しそうです。

となると、やはり

・長年かけて培ってきた技術やノウハウ

・ユニークなネットワークを活用すること

なんかでないとライバルとの差はつけにくいと思われます。

価値の創出(WHAT)、顧客との関係性強化(WHO)、営業・流通面(HOW)において、そういった何か「差の付けられる」リソースの有無を考えます。

範囲を絞り、捉え方を工夫すれば現時点で会社として存続しているのであれば何か必ずあるはずです。なかったらとっくに淘汰されてしまっているはずですから。

「資源」要素の2次進化

今回の話をまとめてみます。

「強み(資源)」について5つの文脈での捉え方

戦略要素「強み(資源)」について、他の戦略要素の文脈で考えたことを整理してみます。

これらが備わっていれば「競争に勝てる」「優位に立てる」ものになっているはずです。

戦略要素「強み」からの2次進化

ということで、戦略要素「強み(資源)」は2次進化して「枢要能力」になります。

文字通り「枢要な」「能力」です。

コアコンピタンスやケイパビリティ・・呼び方は何でもいいですが、競争力を持つために中心となっている重要なリソースを認識し、それを軸として事業展開を考えることになります。リソースそのものより発揮される「能力」が大事であることは言うまでもありません。