治そうとして余計なことをすると副作用で裏目に出る~【中企業病】
「中企業病」は悪循環を惹き起こし、それがどんどん悪化していく・・その場しのぎの対症療法ではダメであること、まずは病気の性質を理解しなければならないことを説明しました
さらに、「中企業病」に罹っていると、悪い状況を改善しようと打つ手がことごとく‟裏目”に出てしまいます。
例えば「経費削減」とか、副作用のダメージ大です
「業績が厳しくなってきたから、経費支出を抑える」っていうのは、よく聞く話です。
本当はこの発想もどうかと思うのですが、それはまた別の機会に
困った時の「経費削減」
中企業病の罹患の有無にかかわらず、業績が厳しい際に検討される対策のひとつです。
経費は利益にダイレクトに効いてくるので、売上を増やすより利益に対するインパクトは大きくなります。
なので、ついつい「困った時の『経費削減』頼み」みたいになってしまいます。
「経費削減」というより「支出抑制」・・それしかできない
「経費削減」と一口に言っても、いくつかのレベルがあります。
- 不採算な事業を整理、統廃合するなどいわゆる「リストラ」
- 非効率を洗い出して共通化や標準化を行う「業務効率化」
- ムダと「思われる」支出を減らそうとする「支出抑制」
「1」や「2」は効果が現れるのに一定の時間を要しますし、手間がかかります。
ですので、「困った時の」となると「3」ぐらいしかありません。
もう絞っても何も出てきませんよ・・
ジャブジャブと交際費等の経費を使うような会社はもうありません。その他の経費についてもすでに相当削減努力をしていて、削るところはほとんど残っていないと思います。
とは言え、利益が減ってきているので、それこそ“乾いた雑巾をしぼる”が如く経費削減を進めます。
同じパフォーマンスが上げられて経費を抑えることが出来れば、そのまま利益が増えるので結構なことなのですが、問題なのは経費を削ったことでパフォーマンスを落とす可能性があるということです。
「支出抑制」による経費削減の余地はあまり大きくは残っていないのに、他にダイナミックに打てる手も採れないので、重箱の隅をほじくるようなことをしてしまいがちです。
意図した効果より副作用のほうが大きくなる
モチベーション低下という副作用
いろんなところで「経費削減のよい例、悪い例」などの情報があるかと思いますのでここで詳しくは書きませんが、いくら良い例であったとしても、何かが“削られる”方向に変わるわけですから程度の差はあれ、何らかの“副作用”が出てきます。
経費を削ることで問題視される副作用の一つは「従業員のモチベーションの低下」です。
中企業病の会社ではこれが軽視できない問題になります。
ただでさえ社内が沈滞ムードなところに、経費削減で今までと違う不便を強いられたりすると、その“気分的な”マイナスの影響は健康な会社に比べて大きくなります。
給料は上がらないのに忙しくなるばかり、そこへ持ってきてセコい(と思う)経費削減策・・やる気まで削いでしまいます。
なんだか分かる気がします
経費を抑えて「時間」を無駄にするという副作用
経費削減策は「今まで出来ていたことができなくなる」とか「使えていたものが使えなくなる」といった「不便さ」を伴うこともよくあります。「面倒が増える」ということは余計な手間がかかるということですから、その分「時間」を費やすということになります。
「直接目に見える支出にはうるさいのに、“時間”には無頓着」という会社は意外と多いです。
従業員への給与は一定額を払えば、あとは大きく変動しない“固定費”のようなものですから、手間が増えても従業員のやり繰りで何とか凌げ・・とでも考えているのでしょうか。
「時間」は企業活動において重要な「資源」でもあります。経費を抑える代わりに、時間を大きくロスするようでは、これからの時代を渡っていけません。
「働き方改革」や長時間勤務による「労災問題」など、残業でなんとかするという時代は終わっています。考え方を変えていかないと、とんでもないことになるかもしれません。
健康な会社であれば、経費削減策で様子が変わって業務に支障を来たしそうなら、現場で考え工夫して、パフォーマンスを維持していくこともできるのですが、中企業病の会社では、考えたり工夫して変えていったりする力を失っているため、マイナスの影響がいつまでも尾を引きます。
ただでさえ忙しい中企業病の会社にとって、従業員の手間を増やすような経費削減策はとてもマズいことになりかねません。
ストレスの増大という副作用
不便になったり手間が増えたりするということは、時間の無駄だけでなく従業員のストレスになります。
経費削減策でよくある例として、
「旅費交通費」を抑えるために、「陸路があったら飛行機はダメ」とか「新幹線は自由席しかダメ」とかのお達しが出ます。
出張で疲れているところ、倍以上の時間をかけて帰宅したり、席を確保するために並んだり、ギリギリに飛び乗って座れずに立ったままになったり・・など、疲労やストレスのことも考える必要がありそうです。
こんなケースも、巡り巡って削った経費の額より“副作用”が大きく出てしまい、利益を損ねる結果となるかもしれません。
会社への反感という副作用
経費削減のせいで今まで出来ていたことが出来なくなります。従業員にしてみれば既得権益を害された気分になりますよね。
本来、経費削減は現場の理解と協力が必要なものですが、中企業病も重くなってくると、トップと従業員が相互不信に陥ったりしているケースもありますので、「また、現場の気も知らないで!」とトップへの反感が増してしまいます。
当然、陰でぶつくさ言います。非公式の場(昼休みとか帰りに飲みに行ったりとか)でぶつくさ言い合ったりするでしょう。
そういうのが盛り上がると、流れで「他の悪いところ」なんかもどんどん出てきたりしませんか?
これもありがちな話やな
経費削減で何かが出来なくなる・・みんなで「不平不満」を持ち寄って共有して、会社やトップに対する反感をふくらませるには持ってこいのタイミングですよね。
生産性の低下による損失のほうが大きくなります
まだまだ副作用はあるかと思いますが、これらが何をもたらすかと言うとズバリ「生産性の低下」です。
モチベーションが下がって、ストレスが増え、会社への忠誠心も低下し、時間を無駄にしてしまえば生産性は落ちて当然です。
生産性の低下は量的な影響だけでなく、もちろん質的にも影響します。その結果として、商品の品質レベルや顧客サービスのレベルが落ちたりすると目も当てられません。
直接的な影響だけはありません。中企業病に罹っていると悪循環によってあらゆるところに悪い影響が出たり、グルグル巡っているうちにその悪影響が増幅したりします。
そんなネガティブな影響(副作用)が大きく出てしまうようなら、経費を減らした額と比べて効果があると言えるでしょうか。慎重に考えなければなりません。
・・が、そんなことに気が回るようなら中企業病にも罹ってないですし、罹っていても軽く済んでいるはずです。
中企業病の会社が業績悪化に直面したら、「経費削減<生産性の低下」となるような判断ミスをほぼ間違いなくやらかすはずです。
‟魔もの”がほくそ笑んでいます
中企業病の会社では「儲からないのに忙しい」「雰囲気も重く活気が失せている」状態が続いています。
そんなところへ、手間を増やしたり、やる気を削いだり、疲れやストレスが溜まるような経費削減策を安易に進めるのはよい策とは思えません。
でもしかし、利益はどんどん減っているので経費は絞れるだけ絞りたいわけです。
手は打ちたい、でも打つ手は裏目に出る・・・“魔もの”がほくそ笑んで大きな口を開けて待っています。
引き続き見ていきましょう。