「戦略はよく分からない」けど、作らなきゃいけない考えなきゃいけないアナタ・・さあどうする?

前回は「戦略なんてくそくらえ!」・・ではなく、「戦略はよく分からない」ということについてお話ししました。

  • 「戦略についての説明」はけっこうテキトーなものが多い
  • 戦略とはどんなものか(定義)が定まっていない
  • 戦略の形式(書き表し方)が見えてこない
  • そもそも表(オモテ)には出てこないから参考にしようにもできない

などの理由から「戦略」がよく分からないものとなっていることを説明しました。

さて「よく分からない」ならどうするか?について今回のお話しを進めようと思います。

よく分からないなら自分で決めちゃえばいい!

特に、「これから戦略を作ろう」とか「考えよう」とする人にとって、「書き表し方」って大事なはずですが、実例とかサンプルとかあんまり見当たらないんですよね。

それが「戦略がよく分からない」原因の一つになっています。

結論から言うと、「分からないなら自分で決めてしまえばいい」わけです。

分かりやすいサンプルでも誰かが出してくれてよさそうなのに・・ないから仕方ない

「現状分析のためのフレーム」や「戦略として組み立てていくための検討プロセス」を説明してくれているものは多いのですが、それだけでは「こう書いたら戦略になります」という具体的イメージが湧いてきません。

「書き表し方」について、誰かが例示でもしてくれたらよさそうなものですが、なかなか見当たりません(私が知らないだけで、どこかにあるんでしょうか?)。

まあ、偉い学者先生とかにしてみれば、ある意味そんな「実務的」なことには興味ないのかもしれませんね。

実務サイドにいる人、例えば経営コンサルタントのような人も、「戦略の書き表し方」とかわざわざ物議を醸しそうなことをはっきりさせたりしないんですかね?

それ以前に、分かってない可能性もありますね。

言いますねぇ

「戦略ってどう書くんすかねぇ・・?」

私が以前勤めていたコンサルティング会社で先輩コンサルタント(上司とも言える偉い人)にも訊いてみましたが、お茶を濁されました。

やはり分かってなかったんでしょうか・・。

もっとも、多種多様な業種、様々な規模の企業がある中で「汎用的」な「定義」や「記述様式」を定められない・・というのが大きな理由なのだと思います。

よく分からなくても「戦略」を作らなきゃいけないとか、どうしよう

例えよく分からなくても「戦略を作りましょう」「作りなさい」という話になったりしたら「分からない」では済みません。

「経営戦略」などの全社レベルのことは社長が決めるのでいいのですが、

  • 部や課で戦略を考える(事業戦略)
  • 営業やマーケティング、人事などについて戦略を考える(機能別戦略)

といったケース、上司の人から「考えてみなさい」とか指示されたり、あなた自身が責任者で戦略を考えなきゃいけないケースとかありますよね。

または、あなたが「経営企画室」の一員で、全社の経営戦略をまとめる・・なんていうミッションを与えられるかもしれません。

そんないきなり・・

会社の指示なんて、たいていいきなりです。

ということで、「戦略の書き方」は自分で決めてしまおう!

「戦略の書き表し方」がハッキリしていないのなら、それについてあれこれ考えあぐねていても時間の無駄です。

これといったカタチがないなら自分で決めてしまえばいい!

そう思いませんか?

Do It Yourself ってわけやね

そんなことできるのかな・・

「定義」から「必要事項」を抜き出すという方法が簡単

「戦略の定義」には「戦略を考える際に必要なこと」が盛り込まれます。

それをヒントにして「戦略の書き表し方」を決めていくことが出来ます。

まずは気に入った「定義」を見つけましょう

いくつか調べたうちで「これいいかも」としっくりくる「定義」を見つけます。

1つではもの足らなかったら、気に入ったフレーズのいくつかを混ぜて「自分なりの定義」としてしまってもいいです。

2つ3つ足し合わせたことで長ったらしくなっても別にいいじゃないですか。それで論文でも書こうってことでないなら。

【戦略定義のほんの一握りの例】

どんだけいろいろと定義があるか挙げてみようと思いましたが、なんか面倒くさいなぁと感じていたところ、ちゃんとまとめてくれている記事を見つけました。

あくまで「一例」ということで、ホントたくさんあるのですがいくつか見てみます。

いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論

Peter F. Drucker, 1994

そのプレーヤーが、すべての可能な状況の下でどのような選択肢を選ぶかを明示する包括的計画

Von Neumann and Morgenstern, 1994

長期的視野に立って目的と目標を決定すること、およびその目標を達成するために必要な行動オプションの採択と資源配分

Chandler, 1962

企業が実現したいと考える目標と、それを実現させるための道筋を、外部環境と内部環境を関連付けて描いた、将来にわたる見取り図

鋼倉久永・新宅純二郎、 2011年

一定の目的のため、顧客を絞り、自社の強みを用い、競合より安いまたはより価値のある商品サービスを提供するための将来に向けた計画である

清水勝彦、 2007年

どうします?続けますか?私はもういいです(笑)

もっと見たい人はこちらに飛んで見てみてください。上記はこの記事から抜粋しています。

https://dhbr.diamond.jp/articles/-/4586

まあアレです。「いろいろあるなぁ」「みんなそれぞれの視点から言ってんなぁ」ぐらいが分かってもらえればそれで十分です。こんなの一つ一つ理解しようとか考えなくてもいいです。

そんな中から「お気に入り」や「気に入った部分を混ぜたもの」を作って「自分なりの定義」にすればいいのかなと思うのです。

「これが唯一の正解」とか「完璧な定義」なんてないわけですから、まさにDIYでよいと思います。

例えばこんなカンジで必要事項を抜き出す

「戦略の定義」から「戦略の書き表し方」を考える際の例を挙げてみます。

経営学の古典ともいうべきチャンドラー先生の定義を使ってみます。

長期的視野に立って目的と目標を決定すること、およびその目標を達成するために必要な行動オプションの採択と資源配分

Chandler, 1962

私はこの定義、シンプルでけっこう好きです。

この定義から「必要事項」を抜き出すと、次のようになります。

「戦略」に必要な事項(チャンドラーのケース)

  • 目的

「目的」は最終的に目指すことです。

  • 目標

「目標」は目的到達のために設けた手段・・だそうです。

  • 行動オプション

競争のやり方みたいなことが表現されます。

  • 資源配分

上記の「競争」で成果を上げるために一番効果的と思われる配分を決めます。

こんなカンジです。

いっそ、定義なんてなくても「必要事項」だけを考えればOK

ややこしいので、定義なんかなくても「必要なこと」だけあれば戦略を書き表していくことはできます。

定義云々をすっ飛ばして、自分なりに「戦略として記述するべき必要事項」を決めてしまえばいいわけです。

(私はどちらかというとコレです。コンサルですから。アウトプット重視ですから。)

もし「それでは戦略と言うに足りない」とか言う人が現れたら、その人の「戦略の定義」や「戦略の表現の仕方」について考えを聞いてみるといいです。しっかりと意見を持った人は少ないんじゃないかと思います。

(もし違った意見の場合、納得するか、ケンカするか・・取扱いはお任せしますねw)

上司とケンカするってか!?

いくら「自分で決めればいい」と言っても、「これじゃダメ」というラインはある

いくら「ハッキリしないから自分で決めればいい」とは言え、「これじゃさすがに戦略と言えない」というラインがあります。

実際に私のコンサル経験で目撃した「こんなので『戦略』って言ってるの?」と思った、ちょっと痛い例を挙げてみます。

「数値目標だけ」とか、いくらなんでも・・

私:「御社の過去の『戦略』について伺っても?」

お客:「ええ、いいですよ。まあちょっと大雑把ですが~」

で、出されてビックリ「数値目標」だけ・・一応「部署別」にはなってましたが。

でもいくらなんでも「目標だけ」ってのは戦略とは言わないでしょう。

1社だけでしたが、実際にあった話です。

「要実施項目だけ」・・これ意外と多い

さすがに「数値目標だけ」というのは過去一度しか見たことありませんが、この「要実施項目だけ」というのは結構多いです。

これまでの業務で課題になってきたことを「ちゃんとやる」という決意込みで「あれやる、これやる」と列挙しただけで「戦略」と銘打っているケースです。

それって単なる「To Doリスト」ですよね。

目標との関連が不明という問題点

しかも、「要実施項目を羅列しているだけ」のケースではこんな問題点も見られることがよくあります。

さすがに「戦略」のつもりですから「目標自体がない」ということはありません。もちろん資料の冒頭に「目標」は何らか書かれています。

問題なのは、その「目標」と「実施すること」との関連性がハッキリしていないことなんです。

本来なら、「この目標に向けて⇒やらなきゃいけないこと」という風に関連付いてるはずですよね。逆に見るなら「これらをやれば⇒目標が達成できる」ということです。

でも多くの場合「そんなことで目標達成できるの?」「そんなことよりもっと大事なことあるんじゃないの?」と、ツッコミどころ満載な「目標付きTo Doリスト」になってしまっています。

ざんねん!

ロジックを気にしていないでしょ

「施策」を列挙することが悪いわけではないですが、「目標達成に向けた」というロジックがハッキリしないというか、気にしていないケースもよくよく見られます。

きっとこんなカンジで書いているからロジックが見えなくなるんだと思います。

  • 「従来の反省を受けて、ちゃんとやるべきこと」をリストから外すわけにはいきませんから、つらつらと列挙します。
  • 次に「追加でやる新しいこと」も挙げますが、新しいことなのでやり方もよく分からないところがあって、ぼやっとしたことしか書けません。

そんな感じで書いたことに「目標達成のためのロジック」は期待できませんよね。

なぜこれまでできなかったのかを深く考えていないでしょ

なぜこれまで「やらなきゃいけないのにできなかったのか」について深く考えることなく、どちらかというと「気合の問題」として考えていると、たぶんまたできません。

「戦略」を考えるうえで大事な問題が隠れているのかもしれません。

人員の数だったり能力だったり、顧客のニーズに適合していなかったり・・。

そういったことを解決するのが先決事項なのかもしれません。

「やらないこと」がない・・のは戦略じゃない!

また別の機会で詳しくお話ししますが、「やること」ばかりの羅列で「やらないこと」がないというのも戦略としてどうかと思います。

だって、これまでは「(新しくやることを追加できるぐらい)余力を残して」業務に当たっていましたか?けっこういっぱいいっぱいで頑張ってきませんでしたか?

「戦略」では「やめること」「やらないこと」がハッキリしていることが重要だったりします。

「数値計画だけ」で「戦略」が表しきれるか?

これがOKなのかそうでないのか難しいのですが、「数値計画」の中に「明らかな意図」が見えるようなら、ある意味「戦略」と言ってもよいのかもしれません。例えば、ある事業の大幅な増加と別の事業の顕著な縮小が見て取れる場合など。

それから、「定量的な計画」だけでなく「定性的な(数値以外の言葉での)表現」によって計画の意図が分かりやすく補完されていれば、それは「戦略が織り込まれている」とも言えます。

そうではなくて、単に今まで通りの数値的な計画が並べられているだけでは「『数値目標だけ』に毛が生えた」程度ですから、これも「戦略」と言うにはちょっと・・というかだいぶ足りません。

「自分で決めればいい」と言われてもやっぱり困る・・

「戦略」というものが分かりにくく、どんな書き表し方をすればいいかもよく分からないわけで、じゃあどうするか?という話をしてみました。

まずは、今回のまとめ

これといった定義も形式も示されていないなら、いっそ自分で決めてしまえばいい・・ということでした。

「戦略の書き表し方」を自分で決めるやり方

  • いろんな定義の「おいしいとこ取り」でもいいので、「戦略ってこんなもの」というのを自分で決める。
  • その定義に沿って、「戦略を書き表すのに必要な事項」を挙げる。
  • (定義を気にせずに直接「必要事項」を挙げちゃってもOK。)

その「必要事項」について検討して書いてまとめたら「戦略」の出来上がりです。

簡単なことですよね。

ただ、いくら「自分で決めていい」といっても、最低限のラインはクリアしてください・・という説明もしました。

最低限クリアすべきライン(留意事項)

  • 「数値目標だけ」とか「要実施項目の羅列」だけとかは」「戦略」とは言えない
  • 「目標」と「施策(やること)」の関連性がないとダメ
  • 「やらないこと」「捨てること」がないのは戦略とは言えない

「よく分からないもの」であることが原因で、戦略の体をなしていない「戦略」がまかり通っているケースもありますので、そんなことにならないようにだけは気をつけましょう。

あとはけっこう自由なものです。

・・というお話でした。

そうは言ってもやっぱり困る

カタチは自分で決めればいいと言われてもやっぱり困るかもしれませんね。

別稿で私の考える「戦略の書き表し方」をお話ししますね。