タチの悪いこの病気の性質を理解しないと、病魔の思うツボ~【中企業病】

「中企業病」が一旦罹患すると、放置していても治らない厄介な病気であることを前回お話ししました。

悪循環を惹き起こし、それがどんどん悪化していく・・その場しのぎの対症療法ではダメなんです。

まずは病気の性質を理解しなければなりません。

病魔の姿と性質を理解しないと対処を【必ず】間違います。注意してください。

中企業病には様々な症状がありますが、症状の一つ一つが問題なのではありません。

どういうことでしょう。大事なポイントみたいですね。

個々の症状だけを見て対処していてはダメです。何の解決にもならないどころか病状を悪化させる恐れがあります。

それぞれの症状は「忙しさが増している」とか「ミスが多い」とか、どこにでもあることで、何も目新くもないのですが、問題なのは個々の症状それぞれが絡み合って悪循環となり、どんどん状況が悪化していくということなんです。

初期症状は自覚もしにくい・・ヒトの病気と一緒

会社で生じる「問題点」のほとんどは「突発的に」出てくるものではありません。じわじわと表れてくるものです。

人間の病気の「初期症状」と同じく、「あれ?」と思っても最初はあまり気に留めて無くて、だんだんとひどくなってくると「あ、やっぱりおかしい」と認識する・・というように。

病根を見つけ出すのもなかなかに困難

よほどハッキリとした外的要因が突発的に起きたのなら、ある意味‟原因”は分かりやすいですが、そうではなく何かじわじわと起こってくることは、認識も遅れてしまうため、原因が分かりにくくなってしまいます。

「中企業病」はその「問題の根っこ」を突き止めれば対処も可能なのですが、「問題点が相互に絡み合って悪循環になっている」となると「根っこ」自体が分からなくなってしまうので困りものです。

ということで、「中企業病」の個々の症状だけを見ていても、病気の本質を捉えることはできないのです。

さらに厄介な性質がいくつもあるんです

中企業病の問題の本質は、個々の症状にあるのではなく、「悪循環が会社に出来てしまっている」ということなのです。

特殊なメガネで見てみると、どす黒い渦が会社の中を回っているようなカンジなのかもしれません。
悪循環ですから“ループ”かもしれませんが、このあとお話しする性質も併せて、“渦”と表現しておきます。

事態を改善しようとするのですが、そう簡単にいくものではありません。
勢いの付いた渦はどこが始まりかも分かりませんし、中途半端な対処では飲み込まれるだけです。

この“病魔=渦”には次のような厄介な性質があります。

  • 悪い状況を改善しようと手を打っても副作用のほうが大きく出る

=悪いところを治そうと打った策のマイナスの影響のほうが際立ってしまう、つまり「対策が“裏目”に出てしまう」ワケです。

  • 活力を奪い、虚弱な体質が慢性化する

=従業員個々のパフォーマンスの向上を阻害し組織を弱体化させます。また、会社の雰囲気を重くして、努力や工夫をして頑張ろうという気概を削ぎます。

  • 依存症から抜け出せない

=売上を増やすための安易な手段に手を染めると、そこから抜け出せなくなってしまいます。

  • 病魔を退治しようとメスを入れても、核心に届かない

=“悪循環”なので実態が把握しにくく、病巣は深く根を張っていて、対処しようとメスを入れても上辺だけになって大した効果が得られません。

  • 悪い状況をエサに肥大化、凶悪化する

=上記のようなネガティブな状況が悪循環を拡大させて、病気が進行します。まるで、意図を持った生きもののようでもあります。まさに“魔もの”です。

対症療法で治せる病気ではありません

この病気が「いろんな問題が絡み合った悪循環」であるということは、“モグラたたき”的な対症療法では効果が期待できないということです。

こっちを押さえようとするとあっちが飛び出す・・ように、下手をすると他の症状を悪化させてしまうのです。

これがコンサルタントとしてツラいところでもあります。

何か「課題」があってコンサルティングを発注してもらうのですが、コンサルティングを進めるうちにその課題よりもっと「重要な課題」に気付くわけです。

ですが、「期間」を定めて契約している場合は、根っこにある「より重要な課題」に対応している時間はありません。

結果として、「(クライアントから依頼された当初の)課題」にだけ対処すると「より重要な課題」がそのままなので、目に見えた効果につながらずに「コンサルティングの不出来」を言われる・・などという恐れもあります。

なので、私は「より重要な課題」に気が付いた時点で、それをクライアントに示して「より重要な課題に対処するために期間と費用を追加する」か「当初想定のまま進めて、コンサルタントの責任を限定するか」を問うことにしています。

そんなの気にせず(気が付かず)にシレっと済ませるコンサルタントも多いと思います。

「課題への対処法は示した。できないのはクライアントが悪い」などと言っちゃえたら楽なんですけどね。

まあ、ビジネスライクに言うとそれが正解なんですが・・。

次からは、中企業病に罹患した会社の状況悪化の様子(“魔もの”が悪さをする様子)を詳しく見ていきます。