なぜコミュニケーションが上手くいかないのか?能力とかテクニックとは別なところにも目を向けるべき

「コミュニケーションがリソースを活性化する」という話をしましたが、イメージとしては分かりやすいというか異論もないかと思います。

ただ、コミュニケーションがリソースを活性化するワケとか、コミュニケーションはどうやれば上手く行く(何をミスったら上手く行かないのか)などについて、ちょっと深掘りしてみる価値はありそうです。

今回は、コミュニケーションが出来るためには何が必要か・・「コミュニケーションの成立要件」についてのお話しです。

個人間のコミュニケーションだけでなく、会社におけるコミュニケーションを考える際にも参考になります。

他ではあまり見ない切り口での検討です。読んでみてくださいね。

コミュニケーションが成立するための要件

そもそも「コミュケーションを上手くやればイイカンジになる」ことが分かっていながら、それが出来ないことがあるのはどうしてなんでしょうか。

「コミュニケーション上達法!」のような「テクニック的な解説」はいくらもありますので「上手いやり方」についてはそちらに譲るとして、ココでは「コミュニケーションの成立要件」に着目します。

上手いとか下手とかの以前に、「整えられるべき状況」が揃っていないとちゃんとしたコミュニケーションはできないと思うんです。これは個人であっても企業であっても。

あなたは「コミュニケーションが下手」なのではなく、単に要件が整っていないから上手くいかないだけなのかもしれません。

では始めましょう。

要件を列挙してみます

ちゃんとしたコミュニケーションが成り立つのに必要な要件を列挙してみます。ココで挙げる要件は「これだけ」というわけではなく、その他にもあり得る、いわば「例示列挙」と考えてください。

私の経験や考えから挙げたものですので、「他にもこんな要件がある」というのを適宜付け加えてください(よかったらそれを教えてください)。

では、まず列挙してみます。

コミュニケーションが成立するための要件

  • 相手がいる
  • 動機がある
  • 話題テーマ)がある
  • がある
  • 手段がある
  • 共通言語がある
  • きっかけがある
  • 時間がある
  • タイミングが合う
  • 同等の知識レベルがある
  • 一定レベルの信頼がある
  • 共通の目的や関心がある
  • 共通の価値観やコモンセンスがある
  • 聞く耳・理解力をお互い持っている
  • 一定レベルの話術・論理性がある

いっぱいありますね・・

「いっぱいあるけどいくつか揃えばいい」っていうものなら、いくらあってもよいのですが、実はそうではありません。

「ひとつでも欠けると上手くいかない」ものなのです。

それってけっこうタイヘンなことなはずですが、私たちはあんまり一つ一つを意識はしていません。意識せずともできているケースも多々ありますが、「上手くいってない」時こそ気にする必要があります。

一つずつ見ていきましょう。

相手がいる

コミュニケーションが成り立つためには、まずは「相手」が要ります。

当たり前すぎますか?

でも、会話・対話の土俵に上がってもらわないと、まさしく「話」になりません。

そのために必要なことは・・

コミュニケーションの相手として認知してもらう

誰かと話したいとして、相手に「自分のこと」・・というより「話したがっている『自分』という存在」を知ってもらうことから始めないといけないケースがあります。

相手も話したがっているならまさに「話が早い」わけですが、例えば「自分よりはるかに地位が高い相手」とか「憧れの異性」とか、こちらが話したいと思っていても、そうヤスヤスと話せない場合もあります。

物理的な距離も関係ありません。「隣の席のあの人と話がしたい」と一方的に思っているだけではコミュニケーションは始まりません。

あの子とお近づきになりたいわぁー

そんな場合に「自分が話したがっている」ことを知ってもらうための労力や工夫が要るかもしれません。

コミュニケーションの相手として興味を持ってもらう

「話したがっている」ことを認知してもらい、さらにその相手に何らか「話してみよう」と興味を持ってもらうことも必要です。

相手にとって何かメリットが感じられて、それでようやく‟土俵”に上がってもらえます。

あなたと話して、彼女に何のメリットが?

え・・

必ずしもポジティブな興味だけではないかもしれません。「こいつ腹立つ!捨ててはおけない!」と、こんなのも「興味」としておきましょう。「マイナスが減る」こともメリットと言えますし。

こっちのほうが手っ取り早いかもよ

・・・

あなたを「コミュニケーションの対象(=相手)」としてみなしてもらうことがまずは大事になるわけです。

動機がある

コミュニケーションが成り立つには双方に「動機」がなくてはなりません。
「ビジネスを上手くやりたい」とか「希望をかなえたい」とか。

「期待」と言ってもよいかもしれません。

そんな大したことでなくても、「相手の気を引きたい」「ヒマをつぶしたい」なんていう些細なことでもありですし、「拒否して悪い印象を与えたくない」とか消極的なものもあり得ますね。

この「動機」については双方で一致していなくてもOKです。むしろ一致するほうがレアです。ともかく「誰かとコミュニケーションしよう」とするなら「動機」があるはずです。

それが全く無いケース・・突然の無用なセールスの電話などに対しては、私は即切りしてしまいます。

話題(テーマ)がある

会話するには「話題」が必要ですよね。

何にもないと沈黙するしかなく、苦し紛れに「今日も暑いですよね」とか天気の話をしたりして。

でもそこから話しが広がって、例えば共通点なんかが見つかって話題ができる・・なんてケースもあります。

一方で、「何を話していいか分からない」という理由で、上辺だけのコミュニケーションしかできないこともあります。

会社の「会議」なんかでこんなことだと、とても時間がもったいないです。

場がある

会議の場、ちょっとした立ち話の場、メール、LINE、SNSなど何でもいいのでコミュニケーションが成立するには「場」が必要になります。

親しい者同士であれば、場は何でもいつでも作れるので気にならないかもしれませんが、心的距離がある相手だと「場」をつくるのも簡単ではありません。そんな相手とのコミュニケーションの場(面談の場やデートの場など)をセットするのは一苦労ですよね。

手段がある

「場」とも関連しますが、直接対面できるなら「リアルの会話」、その他にも「文書」や「(各種の)電子的通信」などの手段があります(いろいろな技術やサービスによって多様な手段が使えるようになっています)。


コミュニケーションの内容に応じて使い分けることになりますが、いずれにせよ、これらがないとコミュニケーションが成立しません。

共通言語がある

当事者同士でコトバが通じる・・当たり前に必要なことです。

言葉が通じない時はジェスチャーも「言語」として機能しますが、内容は簡単なことに限られてしまいます。

余談ですが、「OKサイン」もお国が違えば違った意味にとられることもあるらしいですので要注意ですね。

また、後でも出てきますが「専門用語」もその意味が分かるもの同士でないとスムースにコミュニケーションできなかったりします。

きっかけがある

コミュニケーションは何らかの「きっかけ」で始まります。

「ふとしたきっかけ」で話が進めばいいですが、それを待てないならば、意図して「きっかけ」をつくらないといけません。

「さりげなく」でも「強引に」でも、コミュニケーションを始めるためには何かが要ります。

誰かと話したいなら偶然に頼るだけでなく、きっかけを作ることも大事になります。


時間がある

そのコミュニケーションに割く時間があるかどうかです。ヒマだったら時間はある、忙しければないということです。

でも、忙しいかヒマかは相対的なもので、その人にとって優先度が高ければ忙しくても時間は確保するでしょうし、優先度が低ければ何かと理由を付けて「忙しい」と言って時間が無いことにする場合もありますよね。

相手に時間を確保させようとするなら、「自分の(用件の)優先度」を高くする必要があるわけです。

タイミングが合う

「時間」とよく似たことかもしれませんが、いくら忙しい人でも四六時中忙しいわけではなく、「今は無理」というだけかもしれません。

OKなタイミングに合うこともコミュニケーションができる要件になります。

「ちょうど今その話がしたい」ということもあります。そのタイミングを捉えることがコミュニケーションを上手く進めるポイントになります。

同等の(知識)レベルにある

当事者双方に充実したコミュニケーションをするには当事者双方に同等レベルの知識が必要です。
大人とフツーの小学生がビジネスの話をするとしたら(例え優秀な小学生でも)、おそらくまともな話は成り立ちません。

「知識」は「専門知識」と言い換えてもよいです。

仮に「差」があっても「知識が上の人」が「知識が下の人」に合わせればコミュニケーションは可能になりますが、それは「教える」とか「説明する」とか「聞いてやる」といった意図を含んだ「対等ではない」コミュニケーションにならざるを得ません。

ビジネスの世界では「対等ではない」ケースはよくあります(対顧客とか)。そこで「上手く下りていく」ことができるかどうかが重要にもなります。

一定レベルの信頼がある

いかにもアヤシイ人と踏み込んだコミュニケーションは・・しないですよね。

そこまであからさまにアヤシくなくとも、「信頼していない人」「まだ信頼関係が築けていない人」とは、あいさつ程度の会話はよしとして、踏み込んだ話はフツーしません。

ただ逆に言えば、そんなに踏み込んだ話でなければ、特段の信頼がなくても可能なわけで、それを入り口にして信頼を醸成しつつ、だんだんと大事な話がでるようになっていきます。

「コミュニケーションの内容は信頼の程度に応じる」ということです。当たり前ですね。

共通の目的や関心がある

当事者同士に「共通の目的や関心」があればコミュニケーションは進展しやすくなります。

とは言え、「目的や関心」が完全に一致することは難しいかもしれません。

そんな場合には、両者の目的や関心の「最大公約数的」な部分あるいは「最小公倍数的」な部分のいずれかがハッキリしていればよいでしょう。

例えば、好きな異性がいたとして、一緒に参加するとあるイベントの打ち合わせをするとします。

こちらは「このイベントを通じてより仲良くなって個人的なお付き合いにつなげたい」という‟下心”があったとしても、相手は「このイベントを楽しいものにして参加者の親睦を図りたい」と思っているだけだとします。

こちらの「大目的(本当の目的)」は一旦置いといたとしても「このイベントを成功させる」という目的は最大公約数的に一致するので、その範囲内でならコミュニケーションはいいカンジに進むでしょう。

一方、会社での営業のやり方についてコミュニケーションするとします。
片や「ターゲットの変更」という考え、片や「営業手法の変更」という考えがあったとします。

双方、手段の違いはあるものの「営業成績を良くしたい」という目的は最小公倍数的に一致するので、考えの違いを超えてコミュケーションが成り立ちます。

共通の価値観やコモンセンス(常識)がある

これも完全に一致することはないですが、コミュケーションの「バックグラウンド」にもなります。

「共通するところ(最大公約数的や最小公倍数的に)」があることが前提になります。

価値観が大きくズレている場合は、踏み込んだ話をしようとするとなかなか噛み合いません。

夫婦喧嘩から国家間の紛争に至るまで、「価値観の相違」がコミュニケーションの齟齬(噛み合わなさ)をきたしている事例には枚挙にいとまがありません。

さて、そんな時でも・・

聞く耳・理解力をお互い持っている

共通の価値観といった「バックグラウンド」が大きく違っていても、双方に「聞く姿勢」があればコミュニケーションは成り立ちます。

逆に、いくらその他の要件が揃っていても、自分が言いたいことを言うだけではコミュニケーションになりません。相手の考えていることを聞いて理解する・・意見が違っていても「そういう考え方もある」と受け入れる寛容さも求められます。

一定レベルの論理性と話術がある

相手に理解してもらうためには「論理的」である必要があります。


感性や感覚も会話の彩りとしての意味はありますが、コミュニケーションの局面では論理性がないと「言いたいことを口走っているだけで相手に伝わらない」ということになってしまい、建設的なコミュニケーションはできませんよね。

ニュアンスで通じ合う・・のもあるのかもしれませんが、それは特定の相手との限定された方面でのみ成立することで、あまり一般的ではないです。

あと、何を言っているのか言いたいのかを伝えるだけの話術は必要ですね。

話術としての「上手さ」はココでは問いません。少なくとも「言っていることが伝わる」という最低限のレベルは必要ということです。

もちろん「理路整然としていて」「話術にも長けている」ことはコミュニケーションをする上でアドバンテージになります。

相手を論破するのは効果的か?


イマドキのソーシャルメディア界隈では「論客」が相手を論破するのがもてはやされたりするのかもしれませんが、「理屈と膏薬はどこにでも付く」とも言われるように、背景にある価値観や時代性といった諸々の要素もあって‟絶対的‟に「何が正しい」というものでもありません。


メディアのネタになるような人たちのケースは置いておいて(あれはキャラ立ちさせるためにワザとやっているフシがありますね)、通常の社会では「論破」が必ずしもいい結果をもたらすとも限りません。


日本人という国民性もあるかと思いますが、「囲師は周するなかれ(敵を追い詰めて取り囲む際、完全包囲すると死に物狂いで抵抗されたりするとこちらも少なからず損害を被ることになるので、どっかに逃げ道を空けときなさい・・ということ)」と、かの孫氏も言っているように、理詰めで相手を完膚なきまで「論破する」というのは、相手にしてみれば決して気分のよいことではなく怒らせたり反感を買ったりすることにもなるので、あまり得策とは言えないことも往々にしてあります。


孫氏も「(周することなく)逃がしてしまえ」と言っているわけではなく、賢くコミュニケーションするなら、相手を「周する」ことなく逃げ道を用意したり花を持たせたり味方に付けたりして、自分の思うほうに向かうように事を運ぶのが上策ですね。

さて、コミュニケーションの成立要件が分かったところでどうする?

話の上手下手ではなく、コミュニケーションが成立するための要件という観点から考えていますが、さてこれをどう使いましょうか。

上手くいかないのは、どれかが抜けているということ

個人のコミュニケーションでも、会社等の組織のコミュニケーションでも、上手くいかないのは要件のどれかが抜けているからです。

「何が足りないのか」を考えて対策しないといけませんよね。

何が足りないのかよーく考えてみる

気になる異性とお話しできるようになるためには、「きっかけ」ですか?「場」ですか?「動機」ですか?・・何が足りないですかね。

組織内の偉い人にコンタクトしたいとしても、頼めるほどの「信頼」がまだないですか?「タイミング」が取れませんか?こちらのことを「相手」として認めてもらえていませんか?・・なんとかできないですかね。

社内のメンバー間でもっと意思疎通すべきだけど出来ていない、「時間」がないですか?何を話せばいいか「話題」が分かりませんか?「共通の関心」が乏しいですか?・・・どこに問題がありますかね。

コミュニケーションがリソースを活性化させるんだから、コミュニケーションの成立要件に不足があるなら対策しましょう!

コミュニケーションが「リソースを活性化する」ことは分かっています。

それなら「会社(組織)の力をより発揮させる」ためには「コミュニケーションをすればいい」だけなんですが、それができないケースは多々あります。

そういった「コミュニケーションが上手くいかない」という事例に対して「何が足りないのか、何がコミュニケーションを阻害しているのか」について考えて、対策していくことで会社の業績を好転させることだってできるはずなんです。

成立要件は上記の他にいろいろあると思いますので、よかったらご一緒に考えてみてください。

「コミュニケーション」については私が重視しているテーマでもあり、これからもいろいろな切り口で考えていきます。