競争に勝てる、優位性のある「価値」を提供する~【戦略魔法陣:戦略要素「価値(WHAT)」の2次進化】

「戦略魔法陣ヘクストラグラム」の2次進化のお話しです。

今回は戦略要素「WHAT⇒価値」を、さらに2次進化させていくための検討事項を見ていきます。

狙いは

競争に勝てる価値

にしていくことです。

目次

戦略魔法陣ヘクストラグラムの1次進化おさらい

(ここは初めて見てくれた人のための「1次進化」の概要説明です。必要ない人はジャンプしてください)

戦略魔法陣ヘクストラグラムの特徴は戦略要素が進化することにあります。

1次進化は「戦えるレベル」への進化

戦略要素の1次進化は、6つの戦略要素それぞれが「戦える、競争できるレベルになる」ということでした。

各戦略要素を1次進化させるとは「各要素をしっかり検討する」というだけのこと

ですので、1次進化では進化と言っても「戦略要素についてちゃんと考えてみましょうね」というレベルです。

これまであまり戦略的検討をしてこなかった会社などが考えるべき、ある意味‟初歩的”なことです。

各戦略要素の1次進化形態

6つの戦略要素がそれぞれどのように進化したかというと、次の通りです。

戦略要素「WHAT」は「価値」に1次進化

会社の「商品」に関連する戦略要素「WHAT」は、「競争の土俵に上がる」ために「価値」として捉えることが必要・・ということでした。

自社のビジネスを「モノやサービスをつくって売ること」から、「事業においてどんな価値を提供するのか」という見方に変えるということです。

「そんなこと当たり前・・」と思うかもしれませんが、社長に「貴社の事業ではどのような価値提供を?」とインタビューしてみると、なかなか明確に答えられないケースもけっこうあるんですよね。あんまりそういう考え方をしてこなかった・・みたいな。

戦略要素「価値(WHAT)」の2次進化

さて、いよいよ「戦略魔法陣ヘクストラグラムの『2次進化』」の話に入ります。

2次進化で目指すのは「優位性」の獲得

1次進化は単に「戦える」「競争できる」というだけでしたが、2次進化では「競争に勝つ」「ライバルに対して優位に立つ」ことを意図した議論を進めます

もちろん「議論する」だけでなく「(議論検討した結果)必要とされる事項を備える」ことが出来てはじめて「2次進化レベルに達した」と言えるので、「出来ていなかったこと」「不足すること」に対処していくプランとその実行が必要になります。

実はヘクストラグラムで検討したことを実行していくというのは、そのまま「戦略的に必要なことを実施していく」のと同じことになっています。

「戦略とは」はまた別途検討するとして、「戦略のカタチ」にこだわらずとも「わが社としてやらなければならないこと」はココでやっているような検討の中から十分に出てきますので、あとはそれらをプランニングして実行していくだけです。

戦略要素「WHAT」が「競争に勝てる」ように進化するためには

商品に関する戦略要素「WHAT」は1次進化で「価値」として把握されました。さらに2次進化では「勝てる」ところまでもっていきます。

どういった検討をすべきかを見ていきましょう!

他の戦略要素との文脈で検討するのは1次進化のときと同じ

ヘクストラグラムでは戦略要素の「進化」のために「各要素を他の要素の文脈で考える」という作業を行います。2次進化でも同じです。

他の要素も1次進化の際にそれぞれ相応の検討が済んでいます。それらをベースにして「WHAT」の2次進化を考えていきます。

では、「競争に勝てる価値」の形成・提供へ向けた論点を見ていきましょう!

「価値(WHAT)」-「ターゲット(WHO)」:狙ったターゲットにフォーカスした価値提供

ターゲットのニーズや購買行動に適応する価値提供

1次進化との違いは「ターゲットが明らかになっている」ことです。新規に開拓したいターゲットなのか、既存の顧客をより深耕したいのか、それぞれの志向に応じて「ニーズ」や「購買行動」を具体的に観察、考察してそれに適応した価値提供を行っていくことになります。

ニーズ適応に関するいくつかの論点

王道で行けないなら

ニーズど真ん中にはトップ企業が対応しているなら、それと同じような価値提供では差別化できないですから、ちょっと弱い立場にある企業ならば、ニーズ対応とかについては少々ひねった捉え方が必要かもしれません。

ひねると言っても、奇をてらうわけではありません。そんなことしても「なんかヘンなもの」ができるだけです(まぐれで当たるかもしれませんが)。

ターゲットが決まっているわけですから、トップ企業が思いつかない、あるいは思いついていても対応しないニーズを捉えて、何とかしてみることも必要ではないでしょうか。

ニーズとウォンツ

「ニーズ」と対比的に使われる言葉として「ウォンツ」というのがあります。「ニーズ」ほどは知られていないでしょうし使われる言葉でもありません。

よく知られた名言に従うと、「ドリルが欲しい」がウォンツで「壁に穴が開けたい」がニーズです(さらに「壁に棚を取り付けたい」とか)。

「パソコンが欲しい」はウォンツですが、ニーズはいろいろ考えられます。仕事を効率的にやりたい、ゲームがしたい、動画を作成して配信したい・・

企業としては「ニーズ」を探った上で、最終的には「ウォンツ」に応える「商品・サービス」を提供する必要があるのですが、ニーズの捉え方一つでその方向性は随分変わる可能性があります。

どこに着目するかは腕の見せ所ですね!

事業の行く末が賭かってるって言うてもええんちゃう?

潜在ニーズを呼び起こす、啓発する

ニーズの中には本人も気付いていないかあるいは曖昧なままの「潜在ニーズ」というものもあります。

本人にもハッキリしないわけですから、聞いても答えてもらえません。観察したり推考したりする必要があります。

本人も明確に自覚していないので「こうでしょ?」「これが必要なんですよ!」と「分らせる」ことも必要・・というか「啓発」することで気付くかもしれません。

それが上手くハマると「私(わが社)のことをよく分かってくれている!」と一目置かれる(他の商品や企業とは別格に扱われる)ことにもつながります。

B2Bは合理的です。その「付加価値」はコストがかかってませんか?

企業を顧客とする場合(B2Bの場合)はニーズを考えるにしても、一般消費者と違って‟気分”とか‟好み”とかが入ってくる余地は少なく、合理的に行動しています。「会社としての儲け」につながるか否かで考えるからです。

そういったシビアな期待に応えようとすると、商品回りのいろんなサービスを「付加価値」として付けて関心を惹きたくなるのですが、「単にオマケをつける」ことで「付加価値」と言っているならちょっと考えるべきです。

「顧客利便性」とか言い方は何でもいいのですが、競合商品との差別化として要は「ただのパシリ(いいように使われているだけの存在)」になっているようなら、それは「付加価値」と言うにふさわしいでしょうか。

成果に見合わないコストになっていないか、要確認です。

(これについては別稿でも触れていますので合せてご覧ください)

「価値(WHAT)」-「戦法(HOW)」:「売りやすさ」まで考えた価値の形成や提供

営業やマーケティングに適した(要は売りやすい)「価値」とは?

戦略要素HOWは1次進化して「戦法」になりました。

わが社なりの売り方(営業の仕方、マーケティングの仕方)が認識されているはずです。

その「売り方」をよりスムーズに進めるための価値提供(商品展開)を考えます。

「売りやすい価値」についてのいくつかの論点

買ってもらえる価格で提供できる価値でないと

価値は盛れば盛るほどいいかもしれませんが、それで価格が上がってしまっては買ってもらいにくく、売りにくくなってしまいます。

「値段の割にコスパよし」な範囲でどこまでできるかが大事になります。

マーケティングの「4P」で大事な「Price」についてのバランスです。

パッケージやネーミング、小手先と侮るなかれ

よりインパクトのある‟見た目”を意識して商品をつくります。

せっかく価値のあるものでも目立たず売れないものでは価値が無いも同然です。

価値を上手く伝えインパクトのあるパッケージやネーミング、売り文句は大事です。小手先のことと侮ってはいけません。

コンセプトを尖らせる

買ってもらいやすく売りやすい商品とするためには、「価値を上手く表現して分かりやすく伝えるため」の「コンセプト」が大事になってきます。

競合商品と区別が付かないような平凡なものではなく、もっと尖ったコンセプトで価値提供の差別化ポイントを示していきましょう。

「価値(WHAT)」-「強み(資源)」:自社の強みを活かした価値は高い競争力を維持できる

わが社の強みを活かした価値提供

1次進化でわが社の「強み」はある程度把握できています。強みが存分に活かされた価値であれば他社に簡単には真似されないはずです。

強みを活かした価値提供に関する論点

ハード面よりソフト面

生産設備等の「ハード面」で強みを打ち出そうとしても難しいかもしれません。最新鋭の設備でもライバルが導入してしまえば強みは消滅してしまいます(使いこなすのに相当のノウハウが必要なのであれば、それは「ソフト面」での強みになります)。

あるとしたら、圧倒的に大規模に保有していて「規模の経済性」が働くなどの場合には「どこよりも安価に生産できる」という強みを活かした価値提供ができる場合です。

でもやはり分かりやすいのは技術、ノウハウなどの「ソフト面」での強みですよね。価値をつくり出していて、真似しにくいのはどこかを考えます。

特別なものでなくても

技術やノウハウは、培うには時間がかかります。あるいは外から買ってくる(知財の権利購入やノウハウを持つ人材を招へいする)にしても相応のコストがかかります。

どうしても必要なら手に入れるしかないですが、そんな特別なことでなくても、例えば社内で力を合わせることでできることだってあります。

例えば「営業と生産」が緊密、濃密にコミュニケーションを取る・・ということができれば、「顧客のニーズをすぐに生産に反映できる」わけです。これがなかなかできている会社は少ないですし、大手企業でもなければ「商品企画」が専門部署になっておらず、「顧客の声を生産サイドにすぐ届けられる」というのは「強み」になり得ます。

ネットワークをもっと重視して、そこから生まれる価値に目を向ける

同じように、社外とのネットワークも強みとして活かせる可能性があります。

他社が持たないレアな・・例えば海外や地方とのネットワークであったり、全く異なる業界へのコンタクトルートであったり。

改めて考えてみると、何か面白いものが生まれるかもしれません。見過ごさずに目を向けてみましょう。

これを機に強みとして磨く

それぞれ「まだ強みとまでは・・」というレベルかもしれませんが、「価値の展開」と併せて考えることで、これを機に「他にはないユニークな強み」として磨いていくという考え方も大事だと思います。そうすることで2次進化、3次進化へとつながっていきます。

「価値(WHAT)」-「事業への影響(環境)」:「イマドキ」の状況に適応した価値提供

事業環境変化による影響に適応した価値提供

戦略要素「環境」は1次進化して「事業への影響」となります。

つまりは、単なる環境変化ではなく「わが社のビジネスに対する影響」という観点でちゃんと認識するということです。

ここではその中で特に「商品の開発や展開」に関係する「影響」との絡みで価値提供を考えます。

「事業環境の影響に応じた価値提供」についての論点

市場や顧客の生活様式、購買行動に影響を与えていることは「価値-ターゲット」で捕捉できることもありますが、ここではターゲットに限らず需要に影響を与えている環境変化やその他生産に与えている環境影響なども勘案します。

戦略要素「環境」は1次進化して「自社事業への影響」として把握されているので、その影響を前提に考えればよいでしょう。

事業環境の影響を受けて価値提供にどんな変化があるか?

1次進化でも見たと思いますが、マクロな視点でPEST(政治、経済、社会、技術)的な事象の「影響」に上手く適応する価値提供を考えます。

周辺の技術革新で付加価値が付けられるとか、生活様式の変化に応じて新しい価値提案をするとか。

「イマドキ」にはやっぱりちゃんと対応しといたほうがいい

これまで技術的な問題でニーズに応えきれなかったことでも新しく可能になってくるとか、要するに「イマドキ」の価値提供ができているかどうかです。ここが不十分だと目に見えて競争力が落ちてくるはずです。

規制とか「ウザい」環境変化でも、いち早く対応できれば有利になる

必ずしもよい影響だけではありません。

社会的要請によって規制が厳しくなったとか、海外の情勢によって原材料が高騰するとか・・

「なんでそんなことになるかなぁ・・」とウンザリするような環境変化にも面倒くさがらずに対応しましょう。どうぜやらなきゃいけないことなら、他社よりもいち早く対応出来たらそれはそれでアドバンテージにもなるかもしれません。

何にせよ環境適応が「遅い」ことはあまり良い結果にはつながりません。

問題は「ホントに対応しなきゃいけないのか、一過性のものでそのうち収まるものなのか」これを見極める必要があるということです。

「価値(WHAT)」-「対抗軸(競合)」:ライバルの出方に対抗する価値提供

ライバルへの対抗の仕方

1次進化で自社とライバルの相対的比較をして、「対抗軸」を見出しました。

つまり、ライバルの強いところや弱いところを考えて、わが社としてのスタンスややり方を考えるわけです。

商品についても、ライバルとは別の価値提供を狙うのか、あえて同様のものをぶつけて駆逐するのか・・力関係なんかも関わってきます。

「ライバルの出方に応じた価値提供」についての論点

ライバルの出してくる商品とそれが意図する価値提供に対抗できるものをわが社として出していく必要があります。

ライバルもそれぞれの強みを活かし、狙いをもって商品展開してきています。

わが社としてもライバルの状況に応じた対抗軸を検討しているわけですから、それに沿った展開を進めます。

ライバルが強かったら「スキ」を狙いましょう

いくら強いライバルでも、まったくスキがないわけではありません。価値提供についてウチのほうが上手くやれることが何かあるはずです。

例えば、このエリアなら勝てるとかがあれば・・そのエリアの市場に特化した商品展開では負けないというやり方もあります。

スキらしいものが見当たらず、どうにも太刀打ちできないということなら、「ニーズのスキマ」などを見つけてひねった商品を出すなどして「目先を変える」ことから始めて「土俵を変える」というふうに持って行くことも考えてみます。

「対抗軸」とは何も真っ向からやり合うことだけを言うのではありません。ガチで対抗するのが困難なのであれば「ズラしたり、そらしたり」することもあってよいと思います。

「勝てるところで勝負する」という考え方が大事

ズラしたり、そらしたり・・ニッチと言われようが「そこでなら勝てる」というところで勝負しましょう。量が足りない?・・だったら、ニッチを増やしたり拡げたりしていけばいいだけです。

「ニッチ」というと印象が悪いですが、要は「(今は)少ないけど確かに存在するニーズへの対応」や「(今は)まだ一般的ではないけど新しく芽生えているニーズへの対応」でもって「勝てるジャンル」を開拓していくということです。やると決めたら自信もっていきましょう!

WHAT要素の2次進化

今回の話をまとめてみます。

「価値」提供について5つの文脈での捉え方

戦略要素「価値」について、5つの他の戦略要素の文脈で考えたことを整理してみます。

  • 価値(WHAT)-ターゲット(WHO):狙ったターゲットにフォーカスした価値提供
  • 価値(WHAT)-戦法(HOW):「売りやすさ」まで考えた価値の形成や提供
  • 価値(WHAT)-強み(資源):自社の強みを活かした価値提供
  • 価値(WHAT)-事業への影響(環境):「イマドキ」の状況に適応した価値提供
  • 価値(WHAT)-対抗軸(競合):ライバルの出方に対抗する価値提供

これらの観点で構成されたものであれば、ただの「価値」ではなく「優位な価値」と言えるでしょう。

戦略要素「価値」からの2次進化

戦略要素「価値(WHAT)」から2次進化して「優位価値」になります。

多方面から検討した「勝てる価値」は見えたので、あとは実現するだけです。

そのためにやるべきことはプランを立てて実施します。

「戦略」とか面倒なこと言わなくても、そのプランが「戦略的に必要な施策」になります。

「勝つための価値提供」に必要なことやもんな。そら当たり前にやらなあかんわ。