「戦略コンセプト」は経営戦略や経営計画の軸。検討や策定で外せないポイントは?

「戦略コンセプト」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

企業の戦略において軸になるもので、私はけっこう大事なものだと思います。

今回は「戦略コンセプト」の「どんなものか」や「必要性」、「つくり方」といったあたりを説明します。

「コンセプト」って「ざっくり」なカンジなんで、ざっくりと作ればええんですかね?

まあ、「ざっくり」と言えばそうなんですが、そんなテキトーに考えるものでもありません。いくつか必要なことがあります。

目次

「戦略コンセプト」とはどんなものでしょうか?

「戦略コンセプトがどんなものか」の前にまずは「コンセプト」という言葉について考えてみますね。

「コンセプト(Concept)」は「概念」という意味であり、「特徴を端的に表すもの」という意味にもなります。

商品コンセプトとかマーケティングコンセプトとかと同じように考えればいいです。

ビジネスの場で「コンセプト」というと、ふつうよく聞くのは「商品コンセプト」とかですよね。「マーケティングのコンセプト」なんかもよく耳にするのではないでしょうか。

「商品コンセプト」は「商品の特徴を端的に表す」ということで、その商品が「今までの商品(自社品も競合品も)とどう違うのか」「どんな使用シーンに適しているのか」といった「特徴」を上手く言葉で表現します。キャッチコピーの工夫も必要になります。

いいキャッチコピーだと関心を持ってもらいやすいですよね!

「マーケティングコンセプト」も「買ってもらうための特徴的な工夫を端的に表す」ものです。

これに倣うと、「戦略コンセプト」は「(戦略における)特徴的なやり方や狙いを端的に表す」ものと言うことができますね。

「戦略コンセプト」は何かの役に立つのでしょうか(必要性とか利便性とかについて)

商品コンセプトは商品開発や広告宣伝のために、マーケティングコンセプトはマーケティングを上手く進めるために必要です。「戦略コンセプト」は何のために必要なんでしょうか?

簡単に言うと「戦略を上手くつくって、上手く実行するため」に必要なんです。

戦略をつくる時にコンセプトがあるとブレなくてよいです

商品コンセプトがそうであるように、いろいろと調べたことやアイデアを組み合わせて「つくり上げていく」ために、まずは「こんなふうにしよう」という大枠を端的に表現します。

そうすることで、戦略や計画の策定をブレることなく進めることが出来ます。

策定作業の手戻りを防ぐことが出来ます

逆に、事前確認・共有を怠ると、「そもそもそんなことをするのか?出来るのか?」といっためちゃくちゃ基本的な部分がツッコまれてぐらつく恐れがあります。また、そこそこ作業が進んだ時点で「そうじゃなくて・・」と横槍が入ったりするかもしれません。

単なる横槍だったらまだいいですが、会社のトップからガツンと異論が言われたりしたら大きく手戻り(遡って検討のやり直し)が必要になったりします。

そうなってしまうと、経営企画室などの戦略立案に関わる人としてはとっても困ります。お手伝いする我々コンサルタントも同じくです。

そうならないためにも「コンセプト」を早い段階で共有して、「後からズレた文句言わせない」ように仕向けておくことも大事になります。

実行段階になってからも、戦略的な考え方を端的に共有できると便利です

戦略コンセプトがいいカンジでしっかり定まっていると、商品開発や市場開拓、営業、マーケティングなどの実行段階で「あの案とこの案とどっちにするか」とか「注力すべき点はどこか」といった判断する時の基準にすることができます。

いくら正式な戦略があっても、日々の業務でいちいちそれを持ち出してしては面倒です。

みんなで共有できる「スローガン」みたいなのがあると考えやすいし話し合いしやすいので、迷った時の判断軸として役立ちます。

要するに、端的に表現されたコンセプトがあると、大事なことについて「コミュニケーションしやすい」というメリットがあります

戦略コンセプトがあると、策定段階、実行段階いずれも場合も、関わる人達のコミュニケーションの役に立ちます。

また別の機会にお話ししますが、「企業の戦略」の重要な役割は「コミュニケーションのテーマになること」です。

時間をかけて説明する必要のある「戦略の本体」とは別に、端的に表現された「戦略コンセプト」があると、コミュニケーションにとって好都合なんです。それが「戦略コンセプトが役に立つ」一番の理由です。

「戦略コンセプト」のつくり方

では実際に戦略コンセプトをつくってみましょう。

「戦略コンセプト」に要るもの(構成要素)は何?

まず、「戦略コンセプト」に要るものを考えてみます。

まず、「目標」って要るの?

チャレンジングで大きめの目標を掲げた場合の戦略とカタめの目標の場合の戦略とでは内容も変わりそうですよね。

ですので、まずは「目標」が要るということになりますが、戦略コンセプトそのものに織り込んで表現する必要は特にありません。

「要るけど、出ない」ってカンジですね。

(戦略目標についてはコチラ)

やっぱ中心は「WHO」「WHAT」です

戦略コンセプトは「WHO:誰に」「WHAT:何を」を中心に表されることが多いです。

ただ、例えばアパレル企業が「働く女性に、カジュアルなファッションを提供する」って言ってもあんまり「戦略感」もないですよね。

この程度だと、せいぜい「事業ドメイン(事業領域)」を表した程度で「戦略コンセプト」とは言えません。

もっと「特徴的」な、つまり「ひねり」が欲しいです。

ひねるポイントは「WHAT」

やはり「ひねり」が要るわけですが、ポイントは「WHAT:何を」です。

単に個々の商品をどうこう言うのではなく、その商品を通じて「どんな便益(ベネフィット)」を提供するのかってことについて「特徴的」に表されるのが大事です。

例えば飲食店が「料理だけでなく、時間や空間も併せたサービスとして提供する」というふうに振ると、「料理以外にも何か注力すべきことがある」ことが分かります。

競合商品がほとんどないとか、あっても自社が圧倒的に強いとかならあんまりそんなこと考えなくてもよいのかもしれませんが、多くの場合そんなのんきな話ではないと思います。少しでも「違い」を出していくのが大事なことです。

でも「提供価値」をいじるというより、新しい市場を狙うという戦略もあるので、その場合はもちろん「WHO」が中心になります

「WHAT:価値の展開」だけが戦略ではありません。「今回の戦略は、期待できる商品を新しい市場に展開すること」ということもあります。そんな場合の戦略コンセプトの中心は当然「WHO:客や市場」になります。

「戦略コンセプト」のつくり方手順

では実際に「戦略コンセプト」のつくり方を考えてみましょう。

「戦略コンセプトのつくり方」と言っても、ぶっちゃけ、「この通りやれば誰でもつくれます」という手順がある・・ほど簡単なものではありません。

素晴らしい戦略を考え出すには、着眼点や大胆な思考など・・やはりセンスがものを言いますが、そのための「ヒント」はなるべくたくさんあったほうがいいわけです。

戦略コンセプトを考えるために有用なフレームはいろいろあります。それらを使って(気に入ったヤツでいいです)何か「ヒント」を掴んでください。

そこで、このサイトで紹介している「戦略魔法陣ヘクストラグラム(以下、ヘクストラグラム)」を使って「戦略コンセプトのつくり方」についてお話ししましょう。

「ヘクストラグラム」を使って「戦略コンセプト」を考える

「ヘクストラグラム」は次のようなものです。「6つの戦略要素」で考えます。

(詳しくはこの辺りを見てもらうとよいです)

ざっくり言うと、「各戦略要素を他の戦略要素との関連で解く」・・それだけなんで、別に難しくはありません。

まずは「WHAT」から考えて何かヒントが掴めるでしょうか

  • WHAT-WHO:やはりこれが一番大事でしょう。顧客のニーズを捉えてそれを叶える価値提供のためにできることは何でしょうか?
  • WHAT-HOW:その価値が本当に受け入れられて、十分な価格で買ってもらえるためにどうすればいいでしょうか?
  • WHAT-資源:自社の経営リソースの特長を活かした価値提供とはどういうものでしょうか?
  • WHAT-環境:最近の環境変化に上手く適応する価値とはどんなものでしょうか?
  • WHAT-競合:以上の観点も踏まえて、ライバルはどのように差別化された価値でしょうか?

これらを検討、議論してヒントを得ていきます。

「WHO」を軸にした展開を考えるなら、新たなターゲットは見えてくるでしょうか

  • WHO-WHAT:自社商品を受け入れて評価してくれそうな客は誰ですか?どこにいますか?
  • WHO-HOW:売りやすくて利益が上がりやすい、つまり上客になりそうなのは誰ですか?
  • WHO-資源:自社の経営リソースを活かしてアプローチしやすいのは誰ですか?
  • WHO-環境:最近の環境変化で新たに客になりそうなのは誰ですか?
  • WHO-競合:以上の観点も踏まえて、ライバルより上手くアプローチできそうな客は誰ですか?

これらを議論、検討して、ターゲットを定めるヒントを得ます。

「ステイタス要素」からの考察が大事

「ヘクストラグラム」で「ステイタス要素」というと「資源」「環境」「競合」の3つです。

自社資源や事業環境、競合の動向など「状況に応じて」戦略を考えるべき項目です。

持っている(使える)リソースの状況、環境変化の状況、ライバル企業の動向など、自社の戦略の方向性に大きく影響を与えます・・というか、これらを勘案して最善の策を考えるのが戦略といってもいいでしょう。

「WHAT:何を」創り出そうか、「WHO:誰を」ターゲットにしようか・・とかを自由に考えて決められるわけではありません。

「ステイタス要素」の状況(というか制約)に応じて、その圧をはねのけていくような戦略が求められるわけです。

もっと言うと、事業環境変化の厳しさ、競合動向の激しさ、自社資源の頼りなさ・・といった「危機感」が、それを凌駕するための「戦略」「戦略コンセプト」設定の原動力となったりするわけです。

危機感なかったら、なぁなぁになってしまいますね

そうですね。そのあたりのお話はまたの機会に

まとめ

今回の「戦略コンセプト」については次のようにまとめられます。

戦略コンセプトは、戦略策定前後のコミュニケーションの役に立つ

「戦略コンセプト」があることで、戦略策定時にブレずに手戻りなく進めることが出来る。

戦略実行時にも関係者でスローガンのようの共有されることで、行動の判断軸になり得る。

つまりは、「コミュニケーション」のために、端的に表現された「コンセプト」が役に立つわけです。

「WHAT:何を=提供価値」あるいは「WHO:誰に=ターゲット」を中心に組み立てる

戦略コンセプトの中心は「WHAT:何を=提供価値」ですが、「WHO:誰に=ターゲット」とも合わせて考えるのがよいです。